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EMC設計のポイント1 クーロンの法則で考える

1.EMC設計の目的

EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁両立性)とは、簡単に言うと「他の機器に悪影響を与える電磁波ノイズを出さず、また電磁波ノイズを受けても誤動作しないことを両立させること」です。そして、「EMC設計」とはEMCで困らないように、あらかじめ電磁波を出しにくい手法を設計に盛り込みましょうということです。

電磁波はどうしたら発生しやすくなるのでしょうか?電磁波を出しやすくする方法が分かれば、逆のことをすれば出しにくくなるはずですね。では、EMC設計の目的である「電磁波を出しにくくする方法」を考えてみましょう 。

電界と磁界は常にセットです。ですから、電界が空間に出ていかないようにする方法を考えれば磁界も出ていかなくなり、磁界が変化しなければまた電界が発生することもなく、結果的にめでたく電磁波の空間への放射を防げるはずです。

では、電界の放射はどうやって起こるのでしょうか?2本の導体間にできた電界(電気力線)が導体の終点まで達すると電荷がそれ以上先に行けないので、電気力線だけが伸びていきます。そして最終的には後ろから来た逆向きの電界とくっつくような形で電気力線がループとなり放射されます。その様子はシャボン玉がストローの先から出ていくようなイメージに似ています。そして、そこからさらに想像を膨らませてください。

Q.「もっと大きなシャボン玉を作りたかったらどうしますか?」
A.「ストローの先を広げる、または太いストローにする」

そうです。自然にこのような方法を思いつきますよね。確かにそうすれば大きなシャボン玉が作れそうです。子供の頃、ストローの先に切れ込みを入れて広げて、どれくらいの切れ込みの長さや角度だったら一番大きなシャボン玉ができるか試した記憶があるのではないでしょうか?

右の絵は太いストローだけですが、先を切り広げたストローでも大きなシャボン玉ができそうです。細いストローより太いストローの方が大きなシャボン玉ができるのはなぜでしょうか?ストローの断面が広いからですよね?ストローの中の断面が広いとなぜ大きなシャボン玉ができるのでしょうか?元々のシャボン液の膜が広がっていてあまり膜が伸びなくても玉になりやすいからです。イメージできますか?

2.電磁波を機器の外に出さない方法

ここからが本題です。シャボン玉を電磁波として置き換えると、大きなシャボン玉ができるということは大きな電磁波が発生してるのと似たようなものとイメージできると思います。

正確に言うとシャボン玉と電磁波は違うかもしれませんが、電磁波は見えないのでイメージとして捉えてください。

2本の導体の間隔が狭い時は、導体の終点まで行っても電気力線をたくさん伸ばさなければならないので小さな電界しか放射しません。もし、ループを描けるほど伸ばせなければ、その電気力線は押し返されることになります。回路上の2本の導体の間隔が離れていれば、電気力線も元々伸びていて、終点まで来た時にちょっと電気力線が伸びるだけで大きな電気力線のループができそうです。ですから、間隔が広い方が空間に電界が放射されやすくなります。

シャボン玉なら大きい方が嬉しいですが、今回の主旨は「電磁波を出しにくくする方法」ですから、電磁波は小さくしたいのですよね?回路を形成している2本の導体(回路的に表現すると、「行きと帰りの線」)が近いほど電磁波が空間に放射されにくくなります。近接作用の考え方で表現すると、クーロンの法則から、クーロン力は電荷間の結合は距離が近いほど強くなるので電磁波が空間に放射されにくくなると考えられます。よって電気製品から電磁波を外に出さないようにするためには「いかに機器内の電荷間の結合(クーロン力 )を強くするか」ということがポイントになります。

イメージできたでしょうか?長々と書いてきましたが、意外と単純な方法なのですね。

3.「性能の悪いアンテナ」を作る

アンテナというものは電磁波をなるべく効率よく送受信することが目的ですので、EMCに対するアプローチとは逆になるわけです。ですから、EMC設計では「いかに性能の悪いアンテナをつくるか」ということが基本です。

ということは、アンテナが電磁波を出すメカニズムが分かれば、電磁波を出しにくいアンテナのことも分かりそうです。難しいアンテナの知識はいりません。電子機器に意図せずできてしまう主なアンテナは「ダイポールアンテナ」「ループアンテナ」「スロットアンテナ」の3種類です。それらについて電磁波放射のメカニズムを考えていきましょう。

上図を見ると、2本の導体が広がるにつれて電荷間の距離が離れて電気力線が伸びていて、クーロン力も弱くなっていく様子が分かるかと思います。シャボン玉のストローの先が徐々に広がっている感じです。そして電気力線がループになりやすくなり、空中へと放射されるわけですね。

ちなみに、上図の2本の導体を一番離した状態、つまり180°に広げたものが「ダイポールアンテナ」と呼ばれるものです。

今回は電磁波が出にくくなる方法をクーロンの法則にフォーカスを当てて説明してきました。「いかに性能の悪いアンテナを作るか」と書きましたので、次回は今回説明したダイポールアンテナの構造をもう少し詳しく見てから、「性能の悪いアンテナの作り方」を考えてみましょう。


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